虫歯予防

当院における虫歯と歯周病の予防の取り組みをまとめたのでご覧下さい

虫歯を防ぐためには…

お口の健康には、虫歯予防と歯周病予防が大切です。
ところで、虫歯(専門用語では「う蝕」といいます)はどうしてできるのでしょうか?
虫歯になってしまうメカニズムを詳しく見ていきましょう!

まず虫歯とは

虫歯になってしまうメカニズム

歯が溶けて、溶けるのが止まり、再び固まるという流動的な過程の病気です。

下の図を見ていただくとわかりやすいのですが、食べ物(糖)が口の中に入ると口腔内の細菌が糖をエネルギーにして、2~3分でプラーク(=歯の表面のネバネバした汚れ(歯垢))を酸性に傾け歯の表面を溶かし始めます。これが「脱灰」です。

その後、唾液の力で約20分~40分かけて歯の表面を元どおりに治していきます。これが「再石灰化」です。

ここで注目していただきたいのが時間です。脱灰は2~3分で始まるのに対して再石灰化には20~40分もかかってしまいます。
つまり、常にダラダラと食べてしまう(間食が多い)と再石灰化で歯の表面が元に戻る前に再び脱灰が始まってしまい、歯の表面がどんどん溶け、やがて虫歯になってしまうのです。

また、酸性で歯を溶かす恐れのある飲み物や甘い(糖入り)飲み物にも注意が必要です。

何を食べるか」よりも「何回食べるか」、そして「いつ歯を磨くのか」、口の中に食べ物や甘い飲み物が入っている「時間」が問題なのです。

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むし歯になりやすい人となりにくい人がいるのはなぜ?

皆さんの周りには、「今まで一度も虫歯になったことがない!」という人はいませんか?
実は、虫歯のなりやすさは人によって違うのです。しかし、それは生まれつき遺伝子で決まっているわけではありません。

虫歯のきっかけを作っている一番の原因がミュータンス菌という細菌です。

このミュータンス菌は感染する菌で、数は人それぞれ違います。口の中にミュータンス菌がほとんどいない人もいれば、100万以上の菌を持っている人もいます。残念ながら数が多いほど虫歯になりやすいのは間違いありません。

生まれたばかりの赤ちゃんの口の中にはミュータンス菌はいません。歯が生えそろうまでの期間に保育者(親など)がどのように子供に接するかによって、ミュータンス菌の数が決まります。

例えば、ミュータンス菌を持っている両親が使った箸やスプーンなどをそのまま子供の口の中入れてしまうと、菌がうつり、広がってしまいます。つまり、虫歯は感染症なのです。しかし、少しの菌がたまに入ってくるくらいではそのまま口の中に住みつくことはなく、出て行ってしまいます。 ポイントとなるのは「食習慣」です。

糖が口の中に入ると、それをエネルギーにミュータンス菌がどんどん増殖し、一時的に菌の量が多くなってしまうと体が菌を追い出すことができなくなり、住みついてしまうのです。

つまり、

「ミュータンス菌との接触」+「糖の多い食習慣」=「ミュータンス菌の感染・定着」

となるのです。
一度定着してしまったミュータンス菌の数を減らすことはなかなかできません。しかし大切なのは、自分自身がどのくらいミュータンス菌を持っているのか知っておくことです。ミュータンス菌をたくさん持っていたとしてもお口のケアをしっかりと行い、飲食回数をコントロールすることで虫歯を防ぐことができるのです。

ぜひ一度歯科医院でミュータンス菌の数を調べてみてはいかがでしょうか?

虫歯を防ぐ唾液の働き

次に虫歯を防ぐのにとても大切な唾液の働きについて見ていきましょう。
もともと人間の体には、虫歯菌が出す「酸」と闘うための抵抗力があります。唾液や歯の質などがその力となりますが、これも人によって差があります。
例えば、ミュータンス菌をたくさん持っていて、歯磨きも上手ではないのに虫歯にならない人もいます。それは、この体の抵抗力に秘密があるのです。

唾液の4つの働き

  •  洗浄作用…歯の表面の食べカスを洗い流してくれる
  •  抗菌作用…プラークをつきにくくする
  •  緩衝作用…酸・アルカリ性を中和する
  •  抗脱灰作用…酸によって歯が溶ける働きを低下させ、再石灰化を促進する

唾液はこのような優れた働きをしてくれるので、唾液がたくさん出る人ほど虫歯になりにくいということになります。では、具体的にどれくらいの量が理想的なのでしょうか?
食事の時に食べ物を噛むことで脳に合図が行き、たくさんの唾液がでます。この時に出る唾液を
「刺激唾液」といいます。

この唾液の量が5分間に10ミリリットル以上出るのが理想的とされていますが、少ないと1ミリリットルほどしか出ない方もいます。
唾液の量は年齢と共に減少することが多いため、高齢になってから一気に虫歯が増えてしまうこともあります。また、唾液が減少してしまう理由としてストレスや体調の変化、薬の副作用などが挙げられます。

唾液分泌抑制作用のある薬

  •  利尿薬・降圧薬・抗ヒスタミン薬
  •  抗うつ薬・抗コリン薬・抗炎症薬
  •  鎮痛薬・気管支拡張薬・骨粗鬆症治療薬

これらの薬を服用している方は、歯医者さんにそのことをしっかり伝えることが大切です。

唾液の量の変化によっていきなり虫歯ができることも少なくありません。唾液の恩恵をしっかりと受けるために「よく噛んで食べる」ということを意識していくことが大切ですね。

もう一つ大切なのが唾液の「」です。
質とは「緩衝能」という、酸を中和する力のことを指します。
しかし、この緩衝能にも個人差があり緩衝能が高い人と低い人がいます。
緩衝能が高いということは口の中をより早く中性に戻してくれるため、再石灰化がしやすく虫歯になりにくいのです。また、唾液の量が多い人は、質が良い傾向にあります。
唾液を出しやすくするには、たくさん噛むことの他に、何も入っていない状態で舌を使い、唾液の出る所を刺激する、舌を動かすなどが効果的です。

虫歯になりやすい歯

最後に虫歯になりやすい歯について見ていきましょう。

歯には虫歯になりやすい部位があります。どこが虫歯になりやすいのでしょうか?
それは口腔内の唾液の流れにも大きく関係しているのです。口腔内の唾液の流れは河の本流と支流のようになっています。そのため、大量の刺激唾液に洗われる部位もあれば、少量の安定唾液に常に洗われる部位、また十分な舌の運動なしには唾液の恩恵をほとんど受けることのできない部位もあります。

虫歯になりやすい部位

左の図は、口腔内で唾液の影響を受けることが少なく、したがって虫歯になりやすい部位を示したものです。
このような部位をより注意してブラッシングすることで虫歯を防ぐことができます。
また、上の奥歯と上の前歯の頬側に虫歯がある、治療回数が多いという場合には、その人の虫歯リスクは高いことが予想されます。
こうした場合には、定期健診でのフッ素塗布やフッ素洗口液の使用(ミラノールなど)、食生活の見直し、より注意してブラッシングを行うことが必要です。
また、歯肉がやせて下がり、露出した部分(歯根面)はとても虫歯になりやすいので特に注意が必要です。

フッ素で虫歯を予防する

歯が虫歯菌の出す酸に抵抗する力“酸耐性”という言葉を聞いたことがありますか?

虫歯は脱灰・均衡・再石灰化という流動的な過程の病気であるとお伝えしてきましたが、最初の脱灰はこの酸耐性の低い部分から始まります。ですが、その後の再石灰化によって固まった部分は、酸耐性が高まります。そしてその際に微量のフッ素が存在するとより酸耐性が高くなるのです。

酸耐性が高まるというのは、酸によって溶けにくくなる、つまり虫歯になりにくくなるということです。

歯は脱灰と再石灰化を繰り返すたびに歯質の酸耐性が増し、成熟していきます。
ちなみにこれは、子供の頃に虫歯を多く経験された方が、ある程度の年齢になると、虫歯になりにくくなる理由でもあります。(治療したことの無い天然の歯に限ります。治療したことのある歯についてはそこから虫歯になってしまう可能性が高いです)
これらのことから虫歯予防にはフッ素を取り入れることが有効なのです。

方法としてフッ素入りの歯磨き粉を選ぶ、ミラノール(フッ素洗口液)で口を毎日ゆすぐなど毎日のセルフケアに少しフッ素を取り入れてみるといいですね。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

虫歯・歯周病は予防することができます。日々のセルフケアで自分の歯を守りましょう!

  •  細菌に対して糖を与えない→食習慣の確立、飲食回数のコントロール
  •   唾液の分泌を促進して口腔内を中性に保つ
    よく噛んで食事をする、処方された薬の確認・変更の相談
  •   口腔内の細菌数を減らす→正しいブラッシングをする
  •   歯自身を酸に対して強くする→フッ素で虫歯を予防する
  •   細菌が代謝に使うことのできない糖をとるようにする→キシリトール